「タネは誰のもの?」って聞かれたら…。

「タネは誰のもの?」って聞かれたら…。

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最初に言っておきます。今回の話は結構まじめなテーマです。が、みなさんの食に関係する身近なテーマです。賛成、反対といった答えを求めているわけでもありませんので、どうかご自身なりの解釈で読んでいただければ嬉しいです!

こんにちわ、しげです。

「タネは誰のもの?」

みなさんは子どもにこんな質問されたら、なんと答えますか?


「花や野菜のもの? それか育てて、そこから種を採種した人のもの?」

「じゃあ、その人が種を採った野菜を育てた野菜の種は誰のもの?」

ニワトリが先かタマゴが先か”みたいな話になっちゃいますが、最初に知っていただきたいのは、“種苗は1日にしてならず”ということです。種苗は、人類が文明をもってから今日に至る長い年月をかけて、世界中の農業者が育種してきたことで現在があります。
なので、農業者と新品種を育成した育成者と共に種苗の権利を持つことが国際条約でもうたわれていて、[国連小農および農村で働く人の権利宣言(第19条)]でも明記されているそうです。

「じゃあ、農業者と新品種を育成した育成者のものなんだね!」

解決! 解散~!

と、簡単にはいかないのが今回の話です。

種子法廃止と種苗法改正

今回のこのテーマについてお話するにあたり、重要になるのが種子法の廃止と種苗法の改正です。
混同してしまいそうですが、『種子法』と『種苗法』は別の法律です。

まず、先立って種子法が廃止されました。

この種子法とは…。

主要農作物種子法(しゅようのうさくぶつしゅしほう、昭和27年5月1日法律第131号)は、主要農作物であるコメや大豆、麦など、野菜を除いた種子の安定的生産及び普及を促進するため、米、大豆、麦の種子の生産について審査その他の措置を行うことを目的として制定された日本の法律である。通称は種子法。2018年(平成30年)4月1日から廃止された。食糧難だった時代に制定されたが、大都市と農業県に国が一律に指導する形は廃止され、市町村など各地方自治体ごとに奨励品種への権限が委譲されるようになった。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

簡単にいうと「主要農産物の米や大豆、麦などの種の品質を保ち、安定的に供給できるようしましょう。それには結構な時間と費用が必要で個人では負担が大きいから、各都道府県のJAや農業試験場が生産を行い、その運営のために国が予算をつけますよ~」

って内容で、戦後の食糧難の時期の成立されました。そして、これが廃止されたわけなんですが、その理由は

  • 昔と違い、種子生産者の技術水準の向上などで、種子の品質は安定しているので、一定の役目を終えた。
  • 民間の品種開発意欲を阻害しているから…。

民間も参入しやすい自由な市場にしようといったところでしょうか。

はい、まずここで民間企業の参入が容易になりました。

そして今、種苗法が改正がされようとしています。2020年の通常国会に提出されましたが、多くの反対意見もあり審議に入ることなく通常国会は会期を終えることになりました。

この種苗法とは…。

種苗法(しゅびょうほう、平成10年法律第83号)は、植物の新品種の創作に対する保護を定めた日本の法律。1998年5月29日に公布された。植物の新たな品種(花や農産物等)の創作をした者は、その新品種を登録することで、植物の新品種を育成する権利(育成者権)を占有することができる旨が定められている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この種苗法をなぜ改正する必要があるのかについて、農水省の説明としては

「農業者に優良な品種を持続的に利用してもらうため」日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外流出し、第三国に輸出・産地化されるという事例があり、このようなことがあると国内での品種開発が滞ることが懸念されるので、より実効的な新品種を保護する法改正が必要と考える。からとのこと。

ここで、ポイントとなるのが2つ

  1. 海外流出や特定地域以外での栽培を制限
  2. 登録品種の自家増殖を許諾制

1つ目は、上の農水省の説明にも出てきているのでわかりますね。

※利用条件に違反した場合には、10年以下の懲役または個人で最大1000万円、法人で最大3億円の罰金が科せられます。

しかし、2つ目の“登録品種の自家増殖を許諾制にする”はどのようなことでしょうか。

これについては、
“登録品種の農業者が自家増殖するには、育成権者の許諾を得ることで、収穫物の一部を種苗として使うことが可能となる制度。農業者による在来種の自家増殖、品種登録がされたことがない品種については現状、自家増殖が制限されていません。”
と説明されています。

「それならなんとなく問題なさそう。在来種は今まで通り農業者さんが自家増殖できるんでしょ。」
「日本で開発された品種が海外に流出して逆輸入されるなんてとんでもない!」

ちょっと待ってください。

みなさんは、在来種にはどの品種が入っていて登録品種はどんな品種が該当するのか知っていますか? 私はもちろん!

全部は知りません…。


全部把握している人(農業者も含め)は、ほとんどいないんじゃないでしょうか。在来種と思っていたものや、登録品種ではないと思って自家増殖させていた、種や苗が“実は”登録品種だったら、どうなるのでしょう?

多国籍種苗メーカーは種苗界のジャイアンなのか…。

声優さんが世代交代してからドラえもんをほとんど観ていないのでわかりませんが、最近のジャイアンは昔に比べてマイルドになっているのでしょうか? 映画版のジャイアンはなかなかに男気があってかっこいいところもありますが、テレビ版といえばかなりの乱暴者。「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物」って有名なセリフありましたよね。

今の種をめぐる世界の情勢は、大再編の真っ最中! 合併や買収が進み、巨大な多国籍種苗メーカーが台頭し、上位4社による世界の市場占有率は農薬が約8割、種子で約6割と言われています。これらの企業が種子法の廃止により民間への移行が進む日本の種苗開発に今以上に参入して、品種開発による種子の支配と独占がもし進んだとしたら…。

そのとき、一体

タネは誰ものだと思いますか?

『タネは誰のもの』上映会&意見交換会に行ってきた

さて、前振りで通常の1本分くらいまじめなこと書きましたね。

それは10月下旬のこと。しげは日頃『日刊あわわ』で農業系の話を書いているので(たまの狛犬への浮気はご愛敬)、上映会実行委員会の山子委員長から映画『タネは誰のもの』上映会の連絡をいただきました。がっつり興味のあるテーマで、なおかつ映画のプロデューサーである山田正彦 元 農林水産大臣の講演も聞きに行ったこともあったので即参加の返事をさせていただきました。

映画の内容は前述した、種子法の廃止と、種苗法改正によって今後の日本の農業、特に自家増殖を続けて農業を営んでいる農業者さんがどのような問題に直面する可能性があるのかにスポットを当てています。また、別の視点として新品種を育成している個人育成者さんの意見なども聞くことができます。

上映会場の藍住町総合文化ホールには夜からのスタートにも関わらず、たくさんの参加者が。男女世代問わず、子どもさんを連れてこられている家族もおられました。

上映を終えてから、残られた参加者さんたちの意見交換会が行われました。自然農法や有機栽培を実践されている農業者さんをはじめ、学校の先生や議員さんなど職業もさまざま。みなさん、食と農についての思いを語られました。
ちなみに会場には、『イケてる! 農業者さん数珠つなぎ』でも紹介させていただいた長尾農園の長尾さんの姿も! そのほかのこだわりをもって栽培されている農業者さんとも出会う機会をもらえ、充実した時間でした。

長尾農園さんについてはコチラ!

『イケてる! 農業者さん数珠つなぎ』第3回 長尾農園 長尾善裕さん

付箋会議形式でみんなの意見をまとめました。

今回、『タネは誰のもの』上映会実行委員会として企画運営されたのが

山子 瑞恵さん
種子を守る会・徳島 メンバー

育児の指針になるためとモンテッソーリ教育を学び、その後、ワークショップをスタートし、現在は学びの教室を上板町に構える。活動の中で習い事や教育などソフト面に関心を持つ大人は多いのに、子どもの身体ハード面への関心が薄いことが気になり、食や農への関心を持つ。
学ぶ中で『種子(タネ)』の重要性にたどり着き、2019年10月に『種子を守る会・徳島』の発足メンバーとして活動を始める。主に種子条例制定、種苗法改正案の廃案に向けて積極的に活動している。

柴田 憲徳さん
種子を守る会・徳島 代表

上勝町の自身の農場で阿波番茶・ゆこう・里いも・さつまいもなどを自然農法で栽培。
『食と農を守る会』の代表としても活躍し、食の安全・安心や日本の農業を守る活動を行っている。

『天然工房マグノリア』と聞けば、あわわ読者でパン好きならピンとくる人もいるのでは? 柴田さんはここの店主として、こだわりの小麦と天然酵母を使用し、安全で安心な美味しいパンを焼いておられました。お店は惜しまれながらも2019年4月に閉業されましたが、その製法と意志を引き継いだ『天然こうぼパン ウタリ工房』が大友香代さんによって開業。イベント出店を中心にパンを販売されていますよ。

しげ的なまとめ…。

もともと、関心のあった種子法と種苗法。これに関する、講演を聞いたり映画を観た結果、私は、今提案されている種苗法の改正なら改正しない方がいいと思いました。
しかし、冒頭に書いたようなシナリオで外国の多国籍種苗メーカーによる独占と支配の未来になるのかというと、それはわかりません。国が管理するより民間の方が競争の原理で“より良くて、安全な種子を安価”で提供するかもしれません。
実際、農業者さんにも種苗の自家増殖は行っておらず、F1種(雑種交配種)の種を購入して栽培される方もいます。その方が収量も多くて病気にも強いものが多いからです。
全ての農業者さんが自家増殖を行っていないから許諾制にしても問題ないとかではなく、多様性をもって未来を作っていかなければいけないと思います。
民間の企業は当然利益を追求するので、利益にならなければその品種の種苗育成を突然やめるかもしれません。そうなったときに困らないように、別の種苗の増殖方法、それに関わる人や技術、知識を絶やしてはいけないと思います。

みなさんに、日頃楽しみに読んでいただいている

雑誌『あわわ』『日刊あわわ』で紹介している、おいしい料理を提供するお店が使っている野菜たちは

1つの例外もなく

誰かが作った種や苗からできています。

タネは誰ものだと思いますか?

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