皆さんにとっていいスーパーの条件
とは何でしょう?
●品ぞろえが充実していること
●良質なものが安く売られていること
などなど…。
いろいろな項目が浮かびますが、
何より
地域で愛されていること が
必須なのではないでしょうか。
日々の生活に大きな楽しみを提供してくれる
スーパーマーケット。
その 個性を生かした店づくり や笑顔こぼれる接客、家族経営のアットホームな雰囲気など、
地元の人々に愛される理由を探ってみました!
・《百萬堂/徳島市佐古二番町》
・《スーパーなかはら/徳島市丈六町》
・《フードショップふじむら/美馬市脇町》
・《フードセンター杉屋/勝浦郡勝浦町》
・《エストマーケット/海部郡牟岐町》
・《ショッピング大黒/海部郡海陽町》
がんばりや 本店
/徳島市南末広町
店のモットーをキャベツに込めて
店内に掲げられた、決意表明という一枚の紙。「ピンク色のポップは、仕入れた値段より安くしています!!」と、さらっと衝撃的なことを書いています…。そんなスーパーあります!?
ピンク色のポップを探してみると、春にんじん100グラム19円、ぶなしめじ1袋79円…。さらに店内を見て回れば、小松菜1束99円、国産豚小間切れ肉1グラム1円など、ピンクじゃなくてもだいぶ安いです。
▲『がんばりや』の顔、キャベツ。店内には「キャベツの思い」というポップがあるのでこちらも一読してほしい。
特に安いのは、社長の吉田さんが看板商品だというキャベツ。たとえ高騰して他店が値段を上げたとしても、同店は基本的に年中税抜99円。99円より安くなることはあっても、高くなることはまずありません。
「損が出ることもよくあるよ。バカみたいなこともやっちゃう」と吉田さんは笑いますが、大丈夫なのかと失礼ながらこちらが心配になってしまいます。それにしてもなぜキャベツが看板商品なのか、吉田さんに聞いてみました。
▲社長の吉田さん。目指すのは「なんかよくわからんけど好き」と言ってもらえるような店。
「子どものころ家計が苦しくて、キャベツが食卓によく出ていたんです。手ごろな値段で使い勝手が良いキャベツは、家計の味方なんですよね。だからキャベツへの思い入れが強いんですよ」。
『がんばりや』は日々一生懸命生きる家庭の応援団、というわけ。このモットーを大事に、新鮮なものをできるだけ安く届ける努力を続けているそう。少しがんばりすぎている気はするけれど(笑)。
品質にもこだわりは十分。野菜や果物は産地直送で、魚は鳴門の漁師から仕入れているそう。また、総菜や弁当は店内で手作りしているとのこと。
▲店内で茹でたタケノコは寸胴で店頭に並ぶ。1日3回茹でており、ぬくぬくを買えるのがうれしい。
スーパーになる前は八百屋さんであり、現在の『がんばりや』としてオープンしたのは、平成7年。店舗の工事中だった1月、阪神淡路大震災が起こりました。被災地だけでなく、徳島でも「がんばれ」の声が至るところから聞こえてきたそう。
社長の吉田さんは、「苦しい時期だけど『がんばろう』という意味を込めて、『がんばりや』という名前にしたんですよ」と話してくれました。
▲現在の『がんばりや 本店』。
そして平成22年に籠屋町に2号店である『がんばりや にんにく店』をオープン。なぜにんにく店という個性的なネーミングなのかというと、「僕はにんにくのような人間になりたい」と吉田さん。さて、その心は。「料理に入っていたらおいしい。なかったら味がぼんやりするし、寂しい。でも強すぎると迷惑をかけたりする。僕も、店も、そんな絶妙な存在でありたい」とのこと。
実はにんにく店に決める前は、〝籠屋町店〞になる予定だったそう。というのも、一般公募した結果一番多かったから。公募してみたものの、やはり自分の思いを名前に込めたいと『にんにく店』になったのだそう。ちなみに、オープン当初は焼肉屋さんに間違われていたらしいですよ。
元気と笑顔あっての『がんばりや』
撮影におじゃましたのは、創業25周年祭という名の最強の特売日。あれが安いとか、これが安いとかではなく、あらゆるものがとにかく安い! お客さんの数は写真を見てもらえれば一目瞭然。レジを待つ列は、店の最奥まで続いていました。
▲4月5日に行われた創業25 周年祭には、お買い得商品を求めて大勢のお客さんが訪れた。
青果コーナーから、何やら大変に元気な声が聞こえてきます。「いらっしゃいまーれ(せ)ー!!いらっしゃいまーれ(せ)ー!!ありがとーありがとーありがとーありがとー!!」。
99円のレタスの向こうに吉田さんがいます。野菜を袋詰めしながら、歌うように感謝の言葉の嵐。これはもはや特売日の名物なのだそう。
▲次々と野菜が並べられていく。
「僕は不器用だから、一生懸命にやることしかできないからね」と吉田さん。しかしそのあとに「でも毎日がんばるのは無理、疲れるもん! だから週に2回、特売チラシを出す日はめっちゃがんばるよ」。
そうは言ってもほぼ毎日タイムセールをやっているし、キャベツは年中安いし、結局いつもがんばってしまっています。安さだけでなく、そういうがむしゃらなところも同店が愛される理由のひとつなのでしょう。
▲明るく快活なフロアスタッフさん。
スタッフもみんな明るい! 余談ですが、特売のチラシには毎回おもしろいキャッチフレーズが書かれているのでぜひ見てほしいです(4月5日のチラシに書かれていたのは「八百屋のおっさん、大はしゃぎ」)。
▲カメラを向けるとニコッ!
ほかにも、1日3回店内で茹でたタケノコを寸胴に入れて販売していたり、昔ながらの炒る赤飯を作っていたり、社長自らキムチを作っていたりと、「手間はかかるけど、個性を失わずにいたい」と吉田さん。工夫と元気でがんばる、それが『がんばりや』なのです。
▲店の外では“くだもの店頭市 ”を開催。
※この記事は、2020年GEEN5月号で掲載した内容です。